弁護士コラム

【弁護士コラム】特別受益も遺留分の請求対象になる、具体的なケース

2024.11.25

遺産相続は、理想的には家族の絆を深めるものであるべきですが、しばしば複雑な問題を引き起こします。兵庫県尼崎市の清藤法律事務所では、こちらのブログを通じて、皆様に相続に関する様々な疑問や問題に対処するための知識と解決策を提供します。相続の手続きの基礎から税金の問題、遺言書の作成方法に至るまで、遺産相続に関わる様々な知識・情報をお伝えして参ります。

今回のブログでは“特別受益も遺留分の請求対象になる、具体的なケース”に関する解説を行います。

遺留分と特別受益の関係性

遺産相続において、遺留分と特別受益は密接に関連する重要な概念です。遺留分は、一定の相続人に法律で保障された最低限の相続分を指します。一方、特別受益は、被相続人から生前に受けた贈与や援助のことを指します。多くの方が「特別受益は遺留分の計算に含まれないのではないか」と考えがちですが、実際には特別受益も遺留分の請求対象となる場合があります。

特別受益が遺留分の対象となる条件

2019年7月1日の民法改正により、相続開始前10年以内に行われた特別受益は、遺留分の計算に含めることが可能となりました。これにより、不公平な遺言や生前贈与があった場合でも、一定の範囲内で公平性を保つことができるようになりました。

具体的なケース分析
■ケース1:偏った内容の遺言がある場合

例えば、父親Aが亡くなり、3人の子ども(B、C、D)が相続人である場合を考えてみましょう。Aが「全ての財産を長男Bに相続させる」という遺言を残していたとします。この場合、CとDの遺留分が侵害されている可能性が高くなります。

さらに、Bが相続開始前10年以内に父親から1000万円の住宅資金を贈与されていたとすると、この特別受益も遺留分の計算に含めることができます。これにより、CとDが請求できる遺留分の金額が増える可能性があります。

 

■ケース2:特定の相続人だけが多額の特別受益を受けていた場合

遺言の内容自体は偏っていなくても、特定の相続人が多額の特別受益を受けていた場合があります。例えば、Aの遺産が3000万円で、遺言で均等に分配するとされていたとしましょう。しかし、Bが相続開始前5年以内に2000万円の生前贈与を受けていた場合、この特別受益も遺留分の計算に含めることができます。

この場合、実質的な相続財産は5000万円となり、CとDの遺留分が侵害されていると判断される可能性があります。

遺留分の計算方法

遺留分を計算する際は、以下の手順を踏みます。

 

1. 遺留分の基礎となる財産を算出する

基礎財産 = 相続財産 + 生前贈与(1年以内)+ 特別受益(10年以内)- 債務

 

2. 個人の遺留分割合を確認する

例:配偶者と子どもが相続人の場合、配偶者は1/4、子どもは全員で1/4

 

3. 遺留分額を計算する

遺留分額 = 基礎財産 × 個人の遺留分割合

 

4. 実際に相続した財産と比較する

遺留分侵害額 = 遺留分額 – 実際に相続した財産額

注意点と間違えやすいポイント

1. 10年ルール:

遺留分の計算に含められる特別受益は、原則として相続開始前10年以内のものに限られます。

 

2. 持ち戻し免除との関係:

特別受益の持ち戻し免除があっても、遺留分の計算には影響しません。遺留分の計算では、持ち戻し免除の有無に関わらず、特別受益を考慮します。

 

遺留分侵害額請求の手順

遺留分が侵害されていると判断された場合、以下の手順で請求を行います:

 

1. 相手方との話し合い
2. 配達証明付き内容証明郵便の送付(相続開始から1年以内)
3. 調停
4. 訴訟

時効に注意

遺留分侵害額請求権には時効があります。遺留分侵害の事実を知ってから1年、または相続開始から10年で権利が消滅します。早めの対応が重要です。

専門家への相談の重要性

専門家への相談の重要性

特別受益と遺留分の関係は複雑で、個々のケースによって判断が異なる場合があります。また、法改正により制度が変更されることもあるため、最新の法律知識を持つ専門家に相談することが重要です。

清藤法律事務所では、このような複雑な相続問題に対して、豊富な経験と専門知識を基に適切なアドバイスを提供しています。遺留分や特別受益に関する疑問や不安がある場合は、早めに相談することをお勧めします。

相続は単なる財産の分配ではなく、家族の歴史や感情が絡む複雑な問題です。公平性を保ちつつ、円滑な相続を実現するためには、法律的な知識と家族間の調整が必要となります。特別受益と遺留分の関係を正しく理解し、適切に対応することで、将来の家族関係にも良い影響を与えることができるでしょう。相続に関する悩みがある場合は、ぜひ専門家に相談し、最適な解決策を見つけてください。
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